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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

で、支度をして、婆やに留守を頼んで、いつも乗りつけのタクシーの帳場まで、二丁ばかりの道を歩いて行くと、これはどうだ。まるで申し合わせた様に、向うからその品川四郎がやって来るのに、バッタリ出会ったのである。

「マア、品川さん」

「どちらへ」

「御宅へ御伺いしようと思って。実は青木が変な様子で外出したまんま、帰りませんものですから、若しやお宅にでもと思いまして」

「アア、そうでしたか。イヤ、御心配なさることはありませんよ。実は麻雀の手合わせがありましてね、池袋のある家に居続けなんです。僕も昨夜はそこで泊ったのですが、今日も仕事をすませて、これからそこへ行く所なんです。で、あなたを御誘いしようと思いましてね。皆な御存知の連中です。いらっしゃいませんか。青木君も歓迎するに極ってますよ」

「マア、そうでしたの。じゃ、あたし、どうせ出かけたのですから、このまま御ともしますわ」

という訳で、両人肩を並べて、タクシーの帳場に向ったことであるが、これは又どうしたというのだ、この品川は一体全体どの品川なのだ。

彼の言葉が一から十まで嘘っ八なことは、読者がよく知っている。だが、例の幽霊男の方は青木に殺されてこの世にはいない筈だ。