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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

波越氏はそれを聞くと、ハッとした様に立上って、窓際に近づき、瓶の覆いの白布を取りのけて見た。同時に「アッ」という叫声。瓶の底に、一本の指が切離されて、フワフワと漂っている。

「指環が、指環が」警部はあいた口がふさがらぬ。

「実にうまい手品師じゃないか。指環の彫刻を検べると見せかけて、すばやく指を切って、指環だけ抜取ってしまったのだ。大切な証拠を抜取ってしまったのだ。指に食入っているので切らなければ抜けなかったのだよ」

「それを君は」警部は真赤になって呶鳴った。「知りながら黙っていたのか」

「ウン、あんまり見事な腕前に見とれてね、だが、安心し給え、指環はここにある」明智はそう云って、チョッキのポケットから白金の細い指環を出して見せた。

「いつの間に?」

「あの男を戸口へ見送りに立つ時さ。あいつ、まさかここにもう一人手品使いがいるとは知らなかったろう」

「アア、又君の酔狂か。それはいいが、肝腎のあいつを逃がしてしまったじゃないか。指環よりも、あいつの方が大切だ、証拠湮滅にやって来るからは、あいつこそ犯人かも知れない」

「僕はそうは思わぬ。指環のなくなったことはすぐ知れるのだ。