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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

それを顔をさらして盗みに来る奴が真犯人だろうか。まさかそんな無茶をする奴はあるまい。多分部下のものだよ。今騒ぎ立てたら、大物が逃げてしまう。マア、慌てなくてもいい。こいつはひどく面白そうだから、僕も一肌脱ぐよ。イヤ、あいつを追っかけるのは止し給え。この位の犯人になると、黙っていても向うから接近して来るものだよ。現に今の仕草だって、見方によれば我々に対する挑戦じゃないか」

如何にも犯人が警察に戦いを挑んだのは事実であった。だが、その外の点では、流石の明智も飛んだ思違いをしていたのだ。それ程犯人のやり方がずば抜けていたのだ。明智の思違いは間もなく分る時が来た。そんな議論をしている間に、三十分程無駄な時間が過ぎた。そこへさい前の取次巡査が、変な顔をして、又名刺を持って来た。

「品川四郎」今度のは科学雑誌社長の肩書がない。

「今の男じゃないか」

「そうの様です」

「そうの様ですって、顔を見れば分るじゃないか」

「エエ、併し……」

巡査は何故か妙な顔をして、答えかねている。

「兎も角、ここへ引っ張って来たまえ。逃がしちゃいかんよ」

警部は厳しい調子で命じた。

待つ程もなく、品川四郎がドアの所に現われた。