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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
秘書官はそれを見ると入口に走って、邸内の人々を呼ぶのかと思うと、そうではなく、却って内部からドアに鍵をかけてしまった。
伯爵はいつの間にか椅子を辷り落ちて、床の上に横わっていた。
「うまく行ったわねえ」
令嬢美禰子さんが、お芝居の毒婦の様な言葉を使った。
「君の腕前には感心しましたよ。四人目がかたづいたと云うものです」
野村秘書官が云った。四人目とは白蝙蝠団の人名表の第四番目を意味するのだ。
ああ、何という奇怪千万な事実であろう。賊は内閣総理大臣を斃すのに、先ずその令嬢の入れ替えを行い、次に養子の俊一氏を亡きものにし、いつの間にか野村秘書官まですり換えてしまったのだ。本物の野村氏は、多年伯爵の恩顧を受けた清廉潔白の士、犯罪団に引入れられる様な人物ではない。ここにいる秘書官は、野村氏と寸分違わぬ別人に極っている。
「サア、手を貸して下さい」
偽秘書官が偽令嬢をうながして、たわいなく眠りこけた伯爵の身体を一隅の押入れの前まで引張って行った。秘書官が鍵でその戸を開く。伯爵の身体がその中へ押し込まれる。
「あとは僕一人で大丈夫。あなたは窓の外を見張っていて下さい」