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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
この二人のものを捕縛しなさい」
「待て、待って下さい。この私が赤松でないとおっしゃるのか。これは面白い。どうして私が赤松でないか、その理由を明かにして下さい」
「君は斧村錠一だからだ」
野村秘書官が答える。
「斧村錠一? 聞いたこともない名前だ。だが、若しそんな男がいた所で、その斧村がどうして、赤松と同じ顔をして、しかも警視庁の総監室に納まっていることが出来るのだ。いつの間に斧村が赤松に変ったのだ。狐や狸じゃあるまいし、そんな寸分違わぬ人間が、この世に二人いてたまるものか。気違い沙汰も大抵にするがいい」
赤松氏は、さっきぞんざいな口を利いたことは棚に上げて、プンプン怒って見せた。これが最後の手段なのだ。仮令正体がばれた所で、この一点丈けは誰にも説明がつかぬ。従ってあくまで云い張れば、相手はどうすることも出来まいと、高を括っているのだ。
「オイ斧村、君は僕を誰だと思っているのだね」
「僕は斧村じゃない。だが、君は野村君に極っているじゃないか」
「本当の野村秘書官に、君達の陰謀が看破出来ると思うかね」
赤松氏はグッと行詰った。一体全体、これは何事が起ったのだ。野村秘書官は無論偽物と変っている筈だ。