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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
大きな琺瑯塗りのベッドがあり、ピカピカ光るメスの類が並んだガラス戸棚が見え、一方の隅には複雑な電気装置があり、試験管やフラスコなどのゴタゴタ並んだ大テーブル、種々様々のガラス瓶の行列した薬品棚。
「マア、おかけなさい」
白衣の老人は検微鏡の置いてある机の前に腰かけて、前の椅子をさし示した。愛之助は無言のままそこにかける。
「あんた、生れ変りたいのだね」
「エッ、生れ変るといいますと?」
愛之助がびっくりしたように聞返すと、老人はニヤリと笑った。
「そう。あんたは自分を消してしまいたいのじゃろう。イヤ、何も秘密をうちあけるには及ばん。わしはあんたの身の上など聞きたくはない。何も訊ねないで御希望に応じるのがわしの商売です。あんたからはもうちゃんと莫大な前金を頂いておる。わしはただ黙ってあんたを生れ変らせて上げればよいのじゃ」
愛之助は何か途方もない狂人の国にまぎれこんで来たような感じがした。こちらも気違いの気持になって考えて見ると、どうやら老人の言う意味が分るような気がする。だが、そんな馬鹿馬鹿しいことが、いったいこの世にあり得るのだろうか。
「生れ変ることが出来たら、誰だって生れ変りたいでしょうね。