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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
しかし、あなたのおっしゃる意味はどういう事でしょうか」
「つまり、あんたという人間がこの世から無くなってしまうんだ。死ぬのだね。そして、全く別の一人の人間がこの世に生れて来るのだ。その代価が一万円。どうです、廉いものじゃろう」
「そんなことが、本当に出来るのですか」
「ウン、出来る。厄介じゃが一つ説明するかな。ここへ来る客人は皆、わしの説明を聞くまでは手術を承知しないからね。あんたもそうじゃろう」
「手術といいますと?」愛之助はビクッとして顔色を変えた。
「ハハハハハハハ、怖がっているね。イヤ無理はない。最初は誰でも死刑台へでものぼるような顔をするものじゃ。よろしい、素人分りのするように一つ説明しましょう」老人はやおら居ずまいを直して語りはじめる。「あんたは泥棒や探偵の用いる変装術というものを御存知じゃろう。鬘をかぶったりつけ髭をしたり眼鏡をかけたりするあり来りの方法だ。それが若し鬘もつけ髭も眼鏡も使わず、生地のままの人間の顔を、真から変えることが出来たらどうじゃ。子供だましの変装術なんて全く不用になってしまう。わしの方法は、その生れつきの人間の顔をまるで違ったものに改造する、本当の意味の変装術だ。