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りょうきのはて

猟奇の果

江戸川 乱歩

前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页

青空文庫

愛之助は夢から醒めて、愕然として叫んだ。「君は態とそれに触れなかったが、一番大切なことがある。分っているだろう」愛之助の青ざめた顔がピクピクと痙攣していた。果然自失から醒めたのである。醒めざるを得ないような重大問題に気づいたのである。

「分っている。君の奥さんのことだろう。僕が奥さんをどうかしていたということだろう。名古屋の鶴舞公園の闇の中の囁き、それから君の奥さんが僕宛てに送って来たラヴ・レターだね」

品川四郎が言葉を切っても、愛之助は何も云わなかった。云えないのだ。ただ死にもの狂いの目で相手を睨みすえていた。

「無論トリックだよ。君の奥さんの貞節は保証するよ」

「証拠がほしい」愛之助は額に汗の玉を浮べて、プツリとただ一こと要求した。

「証拠? よろしい。先ずラヴ・レターの方だが、これは簡単だ。無論偽筆だよ。僕が君の奥さんの筆くせを真似て書いたのさ。例によって子供だましだよ。それから、鶴舞公園であいびきしていた男は、君に呼びかけられて人違いらしく答えたけれど、正に僕だった。僕と同じ人間がこの世に二人いる筈は無いのだからね。だが安心したまえ。相手の女は君の奥さんじゃなかった。