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りょうきのはて
猟奇の果
江戸川 乱歩
前篇 猟奇の果、後篇 白蝙蝠「文藝倶楽部」博文館、1930(昭和5)年1月~12月<br>「猟奇の果」もうひとつの結末「猟奇の果」日正書房、1946(昭和21)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 134,971 字 · 270 页
君に殺された男? ウン、あれもかくいう僕さ。とうとう君の念願の人殺しをさせて、最上のスリルを味わせて上げたという次第だ。ハハハハハハ、ボンヤリしてしまったね。信じられないかい。あのピストルは空砲、僕のワイシャツの胸には血紅の入ったゴム袋が忍ばせてあったのだよ。君が発砲すると、そのゴム袋が開らいてドクドク血のりがふき出すという仕掛けさ。あんな子供だましが成功したのは凡て雰囲気だよ。イリュウジョンを作り出す僕の芸の力だったのさ。聊か自惚れてもよさそうだね」
それは実に驚嘆すべき遊戯であった。青木愛之助の猟奇の癖もさることながら、品川四郎の執拗深刻な悪戯に至っては、むしろこの方が病的といってよかった。彼は猟奇の演出に狂人の凝り性を遺憾なく発揮したのである。たしかに一万円は廉いものである。世の猟奇の徒はかくの如き理想的な演出者を、どんなにか渇望していることであろう。
「あの時の生首の接吻かい。ハハハハハハ、無論手品さ。切断された首ではなくて、あの台の下にからだを隠して、首だけがのっかってるように見せかけたのだよ。血みどろのね」
「待ってくれ。ちょっと、品川君、若し君の云うことが本当だとすると、僕には腑に落ちないことがある」