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ふくおうじでん

福翁自伝

福沢 諭吉

02 福翁自伝

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,912 字 · 402 页

青空文庫

には瀬戸物の管を附けて瓶の外に出すなど色々趣向して、ドシ/″\火を扇ぎ立てると管の先きからタラ/\液が出て来る。即ち是れが暗謨尼亜である。至極旨く取れることは取れるが、爰に難渋はその臭気だ。臭いにも臭くないにも何とも云いようがない。那の馬爪、あんな骨類を徳利に入れて蒸焼にするのであるから実に鼻持もならぬ。それを緒方の塾の庭の狭い処で遣るのであるから奥で以て堪らぬ。奥で堪らぬばかりではない。流石の乱暴書生も是れには辟易して迚も居られない。夕方湯屋に行くと着物が臭くって犬が吠えると云う訳け。仮令い真裸体で遣ても身体が臭いと云て人に忌がられる。勿論製造の本人等は如何でも斯うでもして砂と云う物を拵えて見ましょうと云う熱心があるから、臭いのも何も構わぬ、頻りに試みて居るけれども、何分周辺の者が喧しい。下女下男迄も胸が悪くて御飯が給べられないと訴える。其れ是れの中でヤット妙な物が出来たは出来たが、粉のような物ばかりで結晶しない。如何しても完全な砂にならない、加うるに喧しくて/\堪らぬから一旦罷めにした。けれども気強い男はマダ罷めない。折角仕掛った物が出来ないと云ては学者の外聞が悪いとか何とか云うような訳けで、私だの久留米の松下元芳、鶴田仙庵等は思切たが、二、三の人は尚お遣た。