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ふくおうじでん
福翁自伝
福沢 諭吉
02 福翁自伝
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,912 字 · 402 页
兎にも角にも日本国中攘夷の真盛りでどうにも手の着けようがない。所で私の身にして見ると、是れまでは世間に攘夷論があると云う丈けの事で、自分の身に就て危いことは覚えなかった。大阪の塾に居る中に勿論暗殺などゝ云うことのあろう筈はない。又江戸に出て来たからとて怖い敵もなければ何でもないと計り思て居た所が、サア今度欧羅巴から帰て来たその上はなか/\爾うでない。段々喧しくなって、外国貿易をする商人が俄に店を片付けて仕舞うなどゝ云うような事で、浪人と名くる者が盛に出て来て、何処に居て何をして居るのか分らない。丁度今の壮士と云うようなもので、ヒョコ/\妙な処から出て来る。外国の貿易をする商人さえ店を仕舞うと云うのであるから、況して外国の書を読で欧羅巴の制度文物を夫れ是れと論ずるような者は、どうも彼輩は不埒な奴じゃ、畢竟彼奴等は虚言を吐て世の中を瞞着する売国奴だと云うような評判がソロ/\行れて来て、ソレから浪士の鋒先が洋学者の方に向いて来た。是れは誠に恐入た話で、何も私共は罪を犯した覚えはない。是れはマア何処まで小さくなれば免るゝかと云うと、幾ら小さくなっても免れない。