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だいにのせっぷん

第二の接吻

菊池 寛

「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页

青空文庫

村川は、すべてがけがらわしかった。彼は席を蹴たてて立ちたいのを、じっと辛抱していた。

「どうだねぇ。村川君、良縁とは思わないかね。」

今井は、だまり込んでいる村川に話しかけた。村川は気がつくと、いつの間にか持っていた箸を両方とも、半分に折ってしまっていた。

「もう確定したのですか。」

村川は、倭文子が断るとはいっていたが、つい不安になって訊いた。

「まず九分通りはたしかだろう。川辺先生ご夫婦が、のり気になっていらっしゃるのだから、当人だって、いやおうはないだろう。それは京子さんだって、至極賛成だし……」

「そうですね。」

村川は打ちのめされて、うなった。彼は、さながら不安と焦燥との地獄にうめいていた。いきなり立ち上って、今井と宮田との頭を、つづけさまになぐりつけたいような、いらいらしさを感じた。

ふと、その時、部屋の中が、急に明るくなったように、三人の若い女性が入って来たと思うと、

「今晩はどうも。」

「おや、いーさま、わたしどなたかと思ったわ。」

「みーさん、あなたは、うそつきね。」

そんななまめかしい声が、しばらくの間、村川の重い心を取巻いてうずまいた。