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だいにのせっぷん

第二の接吻

菊池 寛

「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页

青空文庫

」

「じゃ、手をお出し。」

「どこ、みーさんの手?」

村川は、闇の中になまめかしい香いとやわらかなきぬずれの音を感じた。

「おおいたい! そんなにひどく握っちゃいやよ……放してよ。おおいたい!。だから、みーさん嫌い。」

「残念! 握ったついでに、うんとつねってやろうと思っていたのだ。」

「ひどい人……ねぇ、こちら。」

彼女はまっすぐに村川の方を向き直った。

「あなたとも握手しましょうね。お手お出しなさいね。」

村川はむせるような、若い女の香いが、むっと襲いかかるのを感じた。だが、彼は手を差し出すような心は、少しもなかった。むしろ、ちぢこまるように、身を退いていた。

白い手が、闇の中で彼の胸にすれすれに左右に動いた。

「どこ! どこ! 手をお出しなさいねぇ。」

村川は、頑固に手を膝につけていた。

「まあ。お出しにならないの。いいわ。」

そういったかと思うと、彼女は闇の中で手さぐりに、お膳をさけながら村川に近づいた。そして、両手で村川の右の手を握った。

「まあ! お行儀よく、膝の上に置いていらっしゃるのねぇ、さあ握手!」

そういって、なみ子は村川の握りしめている手を、ムリに開けながら、自分の右の手でしっかりと握った。