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だいにのせっぷん
第二の接吻
菊池 寛
「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页
京子の一顰一笑に、彼女の幸福や不幸が宿っているのだった。京子の機嫌の悪いときは、彼女の生活は暗くなってしまうのだった。
倭文子が、もっと図々しくもっと世間を知っていたならば、京子の機嫌を取りむすぶくらいは何でもなかったのだろう。彼女が、もっと強い女であったならば、京子と不即不離に生きて行けたのだろう。だが、初心で温良で策も術もない彼女は、京子の強い光の中で手も足も出さず、ただおずおずと暮しているのだろう。京子が、あの程度に機嫌を損じていることは、倭文子の生活に対してどれほどの脅威かわからないのだろう。これから先の何日か陰に陽に、あたり散らされることを考えると、倭文子はつい涙ぐまずにはいられないのだろう。
馬鹿馬鹿しいが、今の倭文子にとっては、それが重大な生活問題なのだろう。
そう考えて来ると、村川は倭文子の心持が、いじらしくてたまらなかった。彼は、出来るだけのことをして、倭文子をかばってやろうと思った。
「京子さんに僕がよくいっておきましょう。怒らないように。」
「まあ! いいえ。」
倭文子は、自分の心持を見透かされたのが、いやだったのだろう。あわてて打ち消した。