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だいにのせっぷん

第二の接吻

菊池 寛

「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页

青空文庫

二十分近く経っただろう。村川の姿が、先刻消えて行った方角からだんだん濃くなって来た。やがて彼は倭文子の前へ来て、だまって立った。

「どう?」

倭文子は、ほのじろい顔を振り上げてきいた。

「落ちた所まで、行ったのですがね。背は立つのですよ。波が来たって、持って行かれることはないんだが、だが、もしかすると……」

村川の声は、重くなった。

「もしかすると、どうなるの?」

倭文子の声は、不安にふるえた。

「もしかすると、落ちたときに、どこかを打ったのかな。」

「打ったとしたら。」

「気絶するか、運がわるければ、それきり死んでいるかですな。」

「まあ!」

倭文子は大きな目をむなしくみひらいた。

「仕方がないですな。」

「でも、あなたはどうなるの?」

「さあ、僕が殺したことになるのですかな。殺意がなくたって。」

「ああ、わたしどうしましょう。」

倭文子は声を立てて、おいおい泣き叫んだ。

「だが、僕はどうなったっていい。あなたとこうして会っただけでも満足だ。」

「まあ。なぜ、こんな所へいらっしゃったの。こんな所へいらっしゃるから、とんでもないまきぞえに会ったのよ」

「だって、あなたがあんな手紙をくれるんですもの。