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だいにのせっぷん
第二の接吻
菊池 寛
「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页
いつも、八時を過ぎてからでないと起きない村川は、この家では最後に一人で朝食を食うのである。だが、その日は食堂へ行ってみると、美智子が、白いエプロンをかけながら、一人でご飯を食べていた。小芋の煮たのを、お箸に四つばかり突き通して、右の手に持っていた。おもちゃにしながら、一つずつ食べようというのであろう。
「いいお団子ですね。」
「ううん。これお芋よ。」
「おいしそうですね。」
「村川さん、寝坊ね。」
「どうして。あなただって、今ご飯食べているのでしょう。」
「だって、わたし仕方がないんですもの。」
美智子は、自分が返事に困ると、いつもそういって皆を笑わせていた。
「もう、かくれんぼしないのですか。」
「ええ。だって、お姉さまが、お怒りになるんですもの。」
「まだ、お姉さま怒っているの。」
「ねぇ、村川さん、いいこと教えてあげましょうか。」
「何です。」
美智子は、小さい身体を延ばして、村川の耳に口を寄せた。そして必要以上に低い声で、
「あのね、倭文子さまが、昨日お泣きになっていたのよ。」
村川は、いやな気がした。京子にいじめられたことを、すぐ想像したからである。
「ほんとうですか。