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だいにのせっぷん

第二の接吻

菊池 寛

「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页

青空文庫

村川は、その後姿を見ると、いとしさで胸が張りさけるようだった。何もいわずに、後から抱きしめて、キスをしたいような衝動を感じたが、彼はそれほど大胆ではなかった。

「よく来て下さいましたね。」

倭文子は、何もいわないで顔を上げただけだったが、彼女のうれしさは、あの美しい眸に一杯になっていた。

「お待ちになりましたか。」

倭文子は、だまって首を振った。

「考えて下さいましたか。あなたが、どんな障害と戦っても、僕と一緒になろうと決心さえして下されば、僕はすぐにでもあなたと結婚したいのです。別に、あなたに縁談があるわけでもないでしょう。」

倭文子は、また黙って首を振った。

「僕は、生涯きっとあなたを愛しつづけます。」

「でも、わたくし京子さんが……」

「京子さんなんか鬼に食われてしまえ! です。京子さんの反対なんか何です。それとも、あなたは僕が、不満なのですか。」

「まあ! わたし、もったいないと思っていますわ。」

「僕こそ、もったいないと思っているのです。」

「まあ!」

「ね、僕はどんなことがあっても、あなたを捨てませんよ。捨てませんじゃない、離れませんよ。あなたが僕から逃げようとしても決して逃がしませんよ。