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だいにのせっぷん

第二の接吻

菊池 寛

「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页

青空文庫

」

京子は、気持が全く暗くなってしまった。誰から電話がかかったのか、急にじりじりして来た。

「そう。じゃ、また。」

彼女が、むしゃくしゃして廊下へ出て一二間歩くと、彼女は急に後から呼び止められた。

「川辺さんのお嬢さんでいらっしゃいますか。あの、社長がぜひお目にかかりたいと申しております。」

さっきの女事務員が、女王に対するような丁寧なお辞儀をした。

今井当之助とは、京子は幾度も会っていた。だが、今日なんか決して話したい相手ではなかった。

「あの折角ですが、ちょっと急いでいますので。またこの次に……」

そういって、京子が去ろうとすると、今井があわただしくドアをあけて廊下に出て来た。今井は、三十をいくらか過ぎていた。立派な顔だが、どこかしまりがなかった、よくこうした実業家の後嗣に見るように、何よりも一番挨拶が上手であった。

「まあ。ちょっと、私の部屋へお通り下さい。受付の者が、大変失礼しました。村川君にご用だったのですか、ちょうど今帰ったばかりだそうですよ。何でもお宅から電話がかかって来たとかで。まあ、ちょっと休んでいらっしゃいませ。こんな殺風景な事務室でも、お茶くらいはございますから。