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だいにのせっぷん

第二の接吻

菊池 寛

「東京朝日新聞」「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1925(大正14)年7月30日~11月4日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 121,960 字 · 247 页

青空文庫

ご飯食べて来たの。」

「それよりも、お母さま!」

「何ですの! あなた、立ちながら、親に口をきいて……」

京子は、面倒くさいといったように、スカーフをかなぐり捨てると、敷居際に、横坐りに坐った。

「お母さま! 村川さんの会社に電話かけて?」

「いいえ。かけませんよ。なぜ? いきなりそんなこと訊いて。」

京子は、母には答えないで、倭文子の方をじっと見つめた。

「倭文子さん、あなたはまさか、かけはしないでしょうねぇ!」

京子の鋭い視線を受けると、倭文子の小さい顔は、急にまたその半分ぐらいに小さくちぢみ上った。

「いいえ。」

彼女の声は、かすかに震えた。

「そう。家の者だれもかけやしないかしら。」

「お母さんがいいつけないんだもの、誰もかけるわけがないじゃないか。どうしたの、そんな険しい顔をして。」

「いいの。それよりも、村川さんいて?」

「いらっしゃるよ。でも、お前、何をそんなに腹を立てているの?」

京子は、ぷいと立ち上った。そして、呆れている母を後にして、廊下へ出た。自分の部屋へ行って不断着に着換えるのさえ、彼女はもどかしかった。村川が父に即答しなかった不満、会社へ尋ねて行って、徒労になったくやしさ、村川に自分の家の名を使って電話がかかって来た不安、おしまいには、今しがた今井に手を握られた憤慨までが一緒になって、彼女の心には