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がん

雁

森 鴎外

壱、弐、参「スバル 第三年九号」1911(明治44)年9月、肆、伍「スバル 第三年十号」1911(明治44)年10月、陸、漆「スバル 第三年十一号」1911(明治44)年11月、捌、玖「スバル 第三年十二号」1911(明治44)年12月、拾、拾壱「スバル 第四年二号」1912(明治45)年2月、拾弐「スバル 第四年三号」1912(明治45)年3月、拾参、拾肆「スバル 第四年四号」1912(明治45)年4月、拾伍、拾陸「スバル 第四年六号」1912(明治45)年6月、拾漆、拾捌「スバル 第四年七号」1912(明治45)年7月、拾玖「スバル 第四年九号」1912(大正1)年9月、弐拾「スバル 第五年三号」1913(大正2)年3月、弐拾壱「スバル 第五年五号」1913(大正2)年5月、弐拾弐、弐拾参、弐拾肆「雁」籾山書店1915(大正4)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 73,950 字 · 147 页

青空文庫

又使を遣ると云うことも、日数が立てば立つ程出来にくくなった。

そこでお玉は一時こんな事を思って、無理に諦めを附けていた。わたしはあれきり岡田さんにお礼を言わないでいる。言わなくては済まぬお礼が言わずにあって見れば、わたしは岡田さんのしてくれた事を恩に被ている。このわたしが恩に被ていると云うことは岡田さんには分かっている筈である。こうなっているのが、却って下手にお礼をしてしまったより好いかも知れぬと思ったのである。

しかしお玉はその恩に被ていると云うことを端緒にして、一刻も早く岡田に近づいて見たい。唯その方法手段が得られぬので、日々人知れず腐心している。

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お玉は気の勝った女で、末造に囲われることになってから、短い月日の間に、周囲から陽に貶められ、陰に羨まれる妾と云うものの苦しさを味って、そのお蔭で一種の世間を馬鹿にしたような気象を養成してはいるが、根が善人で、まだ人に揉まれていぬので、下宿屋に住まっている書生の岡田に近づくのをひどくおっくうに思っていたのである。

そのうち秋日和に窓を開けていて、又岡田と会釈を交す日があっても、切角親しく物を言って、手拭を手渡ししたのが、少しも接近の階段を形づくらずにしまって、それ程の事のあった後が、何事もなかった前と、なんの異なる