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がん

雁

森 鴎外

壱、弐、参「スバル 第三年九号」1911(明治44)年9月、肆、伍「スバル 第三年十号」1911(明治44)年10月、陸、漆「スバル 第三年十一号」1911(明治44)年11月、捌、玖「スバル 第三年十二号」1911(明治44)年12月、拾、拾壱「スバル 第四年二号」1912(明治45)年2月、拾弐「スバル 第四年三号」1912(明治45)年3月、拾参、拾肆「スバル 第四年四号」1912(明治45)年4月、拾伍、拾陸「スバル 第四年六号」1912(明治45)年6月、拾漆、拾捌「スバル 第四年七号」1912(明治45)年7月、拾玖「スバル 第四年九号」1912(大正1)年9月、弐拾「スバル 第五年三号」1913(大正2)年3月、弐拾壱「スバル 第五年五号」1913(大正2)年5月、弐拾弐、弐拾参、弐拾肆「雁」籾山書店1915(大正4)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 73,950 字 · 147 页

青空文庫

所もなくなっていた。お玉はそれをひどくじれったく思った。

末造が来ていても、箱火鉢を中に置いて、向き合って話をしている間に、これが岡田さんだったらと思う。最初はそう思う度に、自分で自分の横着を責めていたが、次第に平気で岡田の事ばかり思いつつも、話の調子を合せているようになった。それから末造の自由になっていて、目を瞑って岡田の事を思うようになった。折々は夢の中で岡田と一しょになる。煩わしい順序も運びもなく一しょになる。そして「ああ、嬉しい」と思うとたんに、相手が岡田ではなくて末造になっている。はっと驚いて目を醒まして、それから神経が興奮して寐られぬので、じれて泣くこともある。

いつの間にか十一月になった。小春日和が続いて、窓を開けて置いても目立たぬので、お玉は又岡田の顔を毎日のように見ることが出来た。これまで薄ら寒い雨の日などが続いて、二三日も岡田の顔の見られぬことがあると、お玉は塞いでいた。それでも飽くまで素直な性なので、梅に無理を言って迷惑させるような事はない。ましてや末造に不機嫌な顔を見せなんぞはしない。唯そんな時は箱火鉢の縁に肘を衝いて、ぼんやりして黙っているので、梅が「どこかお悪いのですか」