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がん

雁

森 鴎外

壱、弐、参「スバル 第三年九号」1911(明治44)年9月、肆、伍「スバル 第三年十号」1911(明治44)年10月、陸、漆「スバル 第三年十一号」1911(明治44)年11月、捌、玖「スバル 第三年十二号」1911(明治44)年12月、拾、拾壱「スバル 第四年二号」1912(明治45)年2月、拾弐「スバル 第四年三号」1912(明治45)年3月、拾参、拾肆「スバル 第四年四号」1912(明治45)年4月、拾伍、拾陸「スバル 第四年六号」1912(明治45)年6月、拾漆、拾捌「スバル 第四年七号」1912(明治45)年7月、拾玖「スバル 第四年九号」1912(大正1)年9月、弐拾「スバル 第五年三号」1913(大正2)年3月、弐拾壱「スバル 第五年五号」1913(大正2)年5月、弐拾弐、弐拾参、弐拾肆「雁」籾山書店1915(大正4)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 73,950 字 · 147 页

青空文庫

末造は今でも残っているこの店の前に立ち留まって、檐に高く弔ってある鸚鵡や秦吉了の籠、下に置き並べてある白鳩や朝鮮鳩の籠などを眺めて、それから奥の方に幾段にも積み畳ねてある小鳥の籠に目を移した。啼くにも飛び廻るにも、この小さい連中が最も声高で最も活溌であるが、中にも目立って籠の数が多く、賑やかなのは、明るい黄いろな外国種のカナリア共であった。しかし猶好く見ているうちに、沈んだ強い色で小さい体を彩られている紅雀が末造の目を引いた。末造はふいとあれを買って持って往って、お玉に飼わせて置いたら、さぞふさわしかろうと感じた。そこで余り売りたがりもしなさそうな様子をしている爺いさんに値を問うて、一つがいの紅雀を買った。代を払ってしまった時、爺いさんはどうして持って行くかと問うた。籠に入れて売るのではないかと云えば、そうでないと云う。ようよう籠を一つ頼むようにして売って貰って、それに紅雀を入れさせた。幾羽もいる籠へ、萎びた手をあらあらしく差し込んで、二羽攫み出して、空籠に移し入れるのである。それで雌雄が分かるかと云えば、しぶしぶ「へえ」と返事をした。

末造は紅雀の籠を提げて爼橋の方へ引き返した。