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くいどうらく

食道楽

村井 弦斎

春の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 160,757 字 · 321 页

青空文庫

その位な激毒だから普通の場合には人の胃中で解毒されるけれども梅とか桃とかの酸類と化合したら一種の中毒作用を起すのかもしれん。牛乳を沸てその中へ梅や桃の液を滴すと牛乳中の脂肪が水分と分離して白い固形になる。それと似たように鰻の毒分へ何か化学作用を起すのに違いない。だから僕は我邦の医者に勧めて食合せ物の化学作用を研究させたいと思うね」大原「なるほど、してみると僕のは鰻の中毒かもしれない」と世には往々未研究の事実あり。中にも食物の化学作用は最も未研究の問題なり。

○鰻は蛋白質壱割八分、脂肪壱割一分、鉱物質一分一厘、その余は水分なり。

○鰻の毒物はイヒチトキシーンと称して鰻の血液中にあるものなり。鰻と鮭は魚類中最も消化悪きものなり。

○鰻と生梅とは最も怖るべき食合せの禁忌なり。これ一は生梅あるいは不熟の李等には時として青酸といえる大劇毒のあるに因る。青酸毒は一滴を吸入しても人をして昏倒せしむ。青酸中毒は速に食物を吐出せしむるが肝要なり。

○鰻の蒲焼は裂きたる鰻を一旦蒸し、蒸したるものをタレをつけながら火の上にて焼き、その後再びザット蒸し、またザット焼きて出せば上等なり。