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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
……
僕はそれを、どうすることも出来ないで、じっと眺めていました。息絶えて動かなくなった死骸から、俺の怨霊は永久に生きているのだという、あの恐ろしい叫び声が、まだ聞えて来る様な気がしました。……
奴の指先きの、幽かな動きが、ピッタリ止まると同時に、つまり、奴が全く死に切った刹那、ふとあいつの血だらけの顔を見ると、僕は思わず逃げ出したい衝動を感じました。なぜと云って、あいつの顔には、毒々しい小豆色の小蛇が、まるでそこから吹き出した血のりのかたまりででもある様に、のたうっていたからです。……
その小蛇は、しばらくの間、顔の上をノロノロと這い廻って、焔の様な黒い舌で、血のりを嘗めていましたが、やがて、顎を伝って、首から床へと這い降りると、何とも云えぬ、丁度奥村源造の呪いの言葉を思出させる様な、いやないやな恰好に、鎌首をもたげながら、スルスルと僕の方へ這い寄って来るではありませんか。……
僕はギョッとして、その辺にあり合う棒切れを掴むと、いきなり小蛇をなぐりつけようと身構えましたが、蛇もその勢に恐れをなしたのか、僕をよけて、部屋の外へ消えてしまったのです。