轻松读懂日语经典作品
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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
進一というのは、玉村氏所有の貧乏長屋に住んでいた小商人の息子で、両親に死に分れ、身寄りもないのを、妙子さんがお母さんにねだって、自分の弟の様にして育てている、可愛らしい子供であった。そんな所を見ても、妙子さんが、世間知らずのねんねえではなくて、大家育ちの云うに云われぬしとやかさの内に、どこか凜とした物を持っていることが分るのだが。
で、そんな日が続く内に、明智は子供等の縁でその親達とも親しみを加えて行ったが、分けても玉村妙子さんとは、双方から不思議に引寄せられる感じで、食堂でテーブルを同じにしたり、お茶に呼び合ったりするばかりでなく、はては、そっと婆やの目を盗んで、彼等丈けで、湖水に舟を浮べる程の親しい間柄になってしまった。
そんな時、彼等は極って、ホテルからは見えぬ、湖水の入江になった所へボートを漕いで行った。そこの岸辺には、こんもりと茂った常盤木の林があって、その青い中に、雑木の紅葉が美しい朱を点じ、それが動かぬ水に、ハッキリと姿を映していた。彼等はいつもその蔭に舟を流して不思議な物語に耽けるのである。だが、読者諸君、二人の関係を邪推してはいけない。