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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1930(昭和5)年7月~1931(昭和6)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 139,264 字 · 280 页
ホラ、見ていらっしゃいよ」
爺やは云いながら、礫を拾って、ゴムに当てがった。
「爺やは名人ですよ。あの八ツ手の葉を打って見ましょうかね。上から二番目のですよ。ホラ」
パチン。
「どうです。うまいでしょう。今度はと、アレ、バルコニイにお姉さまがいらっしゃる。何だか飲んでおいでなさる。オヤ、顔をしかめなすった。きっと苦いお茶でしょうね。坊ちゃん、見ていらっしゃいよ。今度はあのコップを打ってお目にかけますからね」
それを聞くと、少年の進一でさえ変な顔をした。まして大人の二郎青年は、音吉爺さん気でも違ったかとびっくりした。
パチン。礫が飛んだと思うと、二郎の頭の上のバルコニイで、ガチャンと瀬戸物の破れる音がして、妙子の「アレッ」という叫声が聞えた。パチンコの狙いたがわずティーカップに命中したのだ。時候に似ずホカホカと暖い日だったので、妙子はバルコニイへ出てお茶でも飲んで居たものと見える。
「マア、爺や何をするんです。びっくりするじゃありませんか」
「これはお嬢さま、何とも申訳ございません。坊ちゃんにお見せしようと思って、その屋根の雀に狙いをつけたのだが、ついはずれまして」