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あさくさふどき
浅草風土記
久保田 万太郎
線上閱讀久保田 万太郎《浅草風土記(あさくさふどき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 頁
七
やがてわたしはちゃァちゃん……なぜかれをちゃァちゃんというかといえば、市兵衛は後に死んだかれのお父さんの名を継いだので、子供の時分はかれは喜三郎といった。なればこそいまだにちゃァちゃんである……につれられて屋上へ出た。なつかしい浅草のけしきを一ト目にみ渡すためにである。――平地は始終あるいているものの、しかくそれを高みからみ下すという機会はめったに与えられないのである。
七
が、わたしは失望した。若葉につつまれた仁王門と五重の塔との屋根、くッきりとあかるく浮んだその部分のながめをだけ除いて、あとはすべてトタン屋根の波のざつぜんとした起伏。……その起伏の、理窟なくごみごみと、むせッぽく、黄色ッぽく濁った感じにみ渡すかぎりうちつづいているだけのことだった。――むかしのように、しッくりと、整然とくぎられた瓦屋根の列、その幾重畳の末にかすんでいた向島の、いまの季節だったら葉ざくらの梢のはるかな青いつらなり。……よしそれのみえないまでも、たとえばその方角へむいた教室の、かの金巾のカーテンをかけた窓からでも、そのあたりの空の、匂わしく水に近いことはだれにでもはッきり感じられたのである。