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あさくさふどき

浅草風土記

久保田 万太郎

線上閱讀久保田 万太郎《浅草風土記(あさくさふどき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 頁

青空文庫

三

――何んの、大和銀行なら……

ぼくはガッカリした。

なぜか?

“それにしても、まァ、この通りに銀行の殖えたことよ。

いままでにいった幾つかの外に、三井銀行あり、三菱銀行あり、大和銀行あり、協和銀行あり……”

と、ちゃんと、ぼくは、「浅草広小路」の中に、その銀行の名をあげているのである。

――こりゃ、また、何んのこッたい……

助六ならいうところである。

三

勿論、ぼくは、電車通りを突ッ切って、彼岸に達し、大和銀行のまえに立った。そして、あたりを、おもむろにみまわした。……といったら、読者諸兄姉は、かりにも雷門のあの雑沓の中で、“おもむろに”とは何事だ、と、あるいはおわらいになるかも知れないが、その、雑沓は、北側、仲見世よりのほうだけの話で、南側、茶屋町のほうは、人通りさえ、ほとんどなく、汐のひいたあとの干潟といってもない寂しさなのである。……だから、いくらでも、“おもむろに”振舞えるのである。……振舞ってさし支えなかったのである……

で、すなわち、ぼくの目の得たところ……

大和銀行の隣は山一證券だった。

その隣は東京海上火災だった。

つづいて、埼玉銀行、××信用金庫……だった。