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あさくさふどき

浅草風土記

久保田 万太郎

線上閱讀久保田 万太郎《浅草風土記(あさくさふどき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 頁

青空文庫

五

「支那料理」といえば横浜しか思わなかった時代である。必ずわたしたちはその「夜学」の帰りその店のまえに引ッかかった。なぜならその店のまえで売る揚饅頭の白い湯気が冬の近い燈火のいろをいつも明るくつつんでいたから。――そこにはかけ声いさましい「吉原通い」の俥の音が、狭い往来の上をれきろくと絶えず景気よく響いていた。

で、十一月は来た。――そうしたなかに「酉の市」の季節は来た……

五

そのあと三四年してである、いうところの「十二階下」という一区画の出来たのは……

これよりさき公園の中の、玉乗だの、剣舞だの、かっぽれだの、都踊だの、浪花踊だの、そうした「見世物」の一部にすぎなかった「活動写真」がその前後において急に勢力をえて来た。そうしてわずかな間にそれらの「見世物」のすべてを席巻し「公園」の支配権をほとんどその一手に掌握しようとした。と同時に「公園」の中は色めき立った。新しい「気運」は随所に生々しい彩りをみせ、激しい、用捨のない響きをつたえた。――幸龍寺のまえの溝ぞいの町も、そうなるとまたたく間に、「眠ったような」すがたを、「生活力を失った」その本来の面目をたちまち捨てて、道具屋も、古鉄屋も、襤褸屋も、女髪結も、かざり工場も、溝を流れていた水のかげとともにいつかその存在を消した。