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あさくさふどき

浅草風土記

久保田 万太郎

線上閱讀久保田 万太郎《浅草風土記(あさくさふどき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 162,294 字 · 318 頁

青空文庫

影らしい、何一つのうごめくかげさえ射さなかった。

――おや?……

と、わたくしは、驚いてあたりをみまわした。……いつか、わたくしは、吉原のありし日の非常門の中に立っていたのだ。……こんなにも観音さまと吉原とのあいだは近かったのか?

わたくしは、吉原神社の半ば焼け残った玉垣のまえに立った。……わたくしは、そこであえなくいのちをおとしたというある人のために、しずかに帽子を脱った……

東京新聞文化部諸兄――

みなさんのおいいつけによって、わたくしは、昨日……昭和二十一年四月九日……たまたま、丁度、去年はじめて浅草を訪問した一年目のほぼおなじ時間に、同じところに、おなじおもいを抱いて佇みました。……ちゃんともう建てられた仮りのお堂……模型のような感じのお堂の朱ヶのいろのけばけばしさが、仲見世の慌しい人通りとともに、わたくしの目だけを強く射たことでした。

わたくしは、そのあと、ぬれぼとけのまえに立ちました。淡島さまのまえに立ちました。三社さまのまえに立ちました。……ぬれぼとけはしばらく措き、淡島さまも、三社さまも、こんなに色の褪めた、古ぼけた感じのものだったかと思いました。