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しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁

青空文庫

さっぱり日頃とも余りかわりのない彼だった。

「やれ、着いたか」

と、彼はまもなく船上を立った。そしてまだほのぐらい室ノ津の静かな朝をながめ廻して、

「浦人をおどろかすな。ここに合戦はないとすぐ布令ておけ。赤松、案内をたのむ」

と、赤松円心の人数を先に、室山の城へその朝入った。

室ノ津は室の遊女でも知られている古い脂粉の港だが、時ならぬ軍勢の上陸に、町じゅうは戦慄を暗くしていた。

が、尊氏の軍令で、ほどなく、日頃以上な生業の活気に返った。室山の城へも湾内の兵船のうちへも、多くの物資や食糧が買上げられ、ここ両三日、小さな軍需景気を見たのであった。

「まずは筑紫(九州)までも、海上、物に困らぬだけのお支度は、ととのい終ってござりまする」

高ノ師直からこう尊氏へ報告があった。

出航の奉行は、彼と、赤松一族の信濃守範資(室山城主)とが協力でしていた。――ここら播州の沿海はあらまし赤松円心の勢力下である。――尊氏が創痍の舟軍をひきつれて、ひとまずここへ寄港したのも一に円心のすすめであった。

「円心。忘れはおかんぞ。赤松一族の助力なくば、尊氏も今度はどうなっていたかわからぬ」