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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁
「尊氏! 尊氏!」
と、呼ばわり、
「天下の擾乱も久しいことだ。世上、これを皇統の争いともいっているが、またそもそもは、この義貞と汝との宿怨にもよる。相互して一身のために、万民をくるしめているよりは、どうだ、いっそのこと、一騎打ちの勝負をして、雌雄を決しようではないか。……いやか、おうか。出て来い尊氏。……こたえがないのは、さては恐れて、深くかくれているのか。さらば、義貞の弓勢だけでも知ッておけ」
と、そこの門扉へ、一箭を射て引っ返した、などという一場の勇壮なる話もある。
が、これは「項羽本紀」にある支那軍談とそっくりである。おそらくはそれの模作だろう。しかし義貞がこれほどな意気であったのはまちがいない。
かくて、民家から堂塔仏舎は惜しみなく毎日焼かれ、一日に敵味方の死傷数千と数えられる日もめずらしくなかった。そしていつか、天地の荒涼は、血の秋だった。
殺し合いは日課だった。鼻は屍臭に馴れ、血に飽いた人間は、さらに、次の物をギラギラした眼で捜しあう。
掠奪、輪姦、暴酒、あらゆる悪徳が、残暑のカビみたいに、敵味方の兵を腐蝕しだした。「軍令」そんなものが、もう人間を規矩しうる現実ではない。