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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(七)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 330,262 字 · 662 頁
さきごろ、信濃北越に大兵をおこし、わずか二十日の間でしかなかったが、一時にせよこの鎌倉の府を奪回した先代軍の大将は――その亀寿さまが名をかえた――北条時行どのであった」
「そうです。……足利直義どの以下を追い落し、ふたたび、亀寿さまをいただいて、この鎌倉へ入ったときの、一族方のよろこびは、ことばにも言いつくせません。けれどそれもわずか二十日、たちまち、京からあなた御自身が加勢に来て、あわれ私たちの夢は、二十日先代と、世の人が笑うほど、つかの間に、みじんとなってしまいました」
「ぜひもない。なべて、弱いものは、亡ぶしかない世の中だ」
「いいえ」
と、棗はするどく首を振った。解け落ちた頭巾の下も無造作なつかね髪にすぎず、紅白粉も知らない顔はただ一途で異様な若さだけに研がれていた。
「おことばですが、ほんとの人らしい人は、弱い群れの中にこそ大勢います。弱いながら人の美しさを持って必死に生きているものを、そんな者は亡んでしまえとは、あなたらしい言い草です。だから、わ、わたくしは」
ふと、嗚咽になりかけた。唇をむすぶ。キラと目だけで尊氏を射、そして、涙をこらえてから、なお次をいおうと体じゅうの敵意を少しも解いていない。