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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

高時の私生活は、高時だけのものである。

彼の出入だけを見ていては、鎌倉の苦悩のなにもわからない。現に、幕府の営中は、それどころでない空気だった。

いまも警蹕が、

「ご帰館――」

とつたえ、また、

「中御所へ入御」

と側衆から、柳営諸所の寄人だまりへふれわたされても、営中の、おもくるしいまでの緊張には、変化もなかった。ただ、華奢な一群の人員が激増しただけに過ぎない。

事あれば、ここには一族、重臣、元老、それに譜代の御家人。いかめしい肩書の人々は、ありあまっている。

そして、たれも心のうちでは、一個の驕児高時を、あてにはしていなかった。

北条氏である!

九代の幕府である!

その組織が彼らの主人であった。一世紀半にわたって、日本全土に根を張ってきた政体の巨幹である。この組織が、と恃んで、

「太守(高時)は、おかざりものでよい。たとえ少々、ご奇矯であろうとも、執権職の空座をめぐッて、内輪争いを見るよりは、やはり、ご正嫡をあがめておくに如くはない」

という考えなのである。ここ数日らいの難局もまた、全北条の主脳だけで、閣議にあたまをいためていたのだ。

それにしてもである。