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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

名和長年

長い顎から禿げ額までが、その面長をよけいにのぺッと見せているが、富裕で子福者らしい人相を邪げてはいなかった。

「お変りもなく」

と、その兄の姿を見上げながら、悪四郎泰長は、他人行儀に遠くで手をつかえていた。

もっとも、兄との対面は、何年ぶりやらわからない。

しかもこの深夜、とつぜん故郷の門をたたいて、兄の長年やら義姉やらの、一家を驚かせたものである。

「いや変ったさ。わしもな」

長年は見よがしに、薄い髪の毛をなでまわした。

壮年からもう若禿げの方だったが、なるほど地肌も透くばかりとなっている。その少ない髪では茶筅にも結えないのだろう。二つに折って、塩辛トンボみたいな小さいちょん髷に結っていた。

「変らぬのは、悪四郎、おぬしじゃないか。……もう寝所に入りかけていたところだったよ。びっくりしたわさ。あいかわらず突ッ拍子もない」

「この数年間、一片のお便りだにせず、いきなりこんな深夜飛びこんでまいりまして」

「いやまあ、それはいいが、人払いしてくれとは、いったいどういう用なのだ。まずそれを聞こうじゃないか」

「兄上」

ずっと、膝をつめて来て。

「じつは今夕。隠岐のみかどのお供をして、近くの浦までご案内してまいりました」