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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
阿野廉子
「目付島だな」
別府の柵の兵は、湾のすぐ正面の小島へ小手をかざしたが、はっきりとはしない。
やがてようやく、東方の模糊な空に揉み出された日輪のにじみへ。
「オオ美田院(現、美田尻)の浦に、鰐淵寺の寺船が着いておるぞ」
と、すぐその由を近くの別府屋敷へしらせた。
能登ノ介は、腹巻や太刀の佩をつけながらすぐ出て来て。
「なぜ寺船など寄せつけたか」
と、寝起きづらを、一そうまずいものにして、柵の兵どもを叱りちらした。
「たとえ鰐淵寺の船であろうが大社船であろうが、かまえて許可なく島前に着けさすなと、かたく申しつけてあるではないか」
「はっ」
「目付島の見張りも何しておるのだ。船を見いだしてから、慌てて貝を吹いたとて何の役に立つとおもうか」
「いえ、昨夜から今暁へかけては、めずらしいほどな濃霧でございましたので」
「たわけ者」
大喝して。
「そうした時こそ、いちばい警戒を密に、浦々から艀も出して、なぜ終夜見廻っておらんのだ。いや言ってみても、あとのまつりだわ。すぐ船手の勢を組んで、あの寺船を、湾外へ追ッ払え」
しかし、そのときはもう美田院の荒磯のほうから二人の僧をとりかこんだ一群の兵が、ついそこへ見えていたのだった。