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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

博多日記

「これはそちの母へのかたみだ。これを持っておまえはここから肥後へ帰れ。……何、何、父と一しょにだと。ばかをいえ。今日だけが世の終りではない。早く落ちろ」

渡したのは、ゆうべ懐紙に書いていた一首の歌と、ひたたれの袖だった。

「この上は、探題英時の首をあげ、九州の北条城を枕に討死をとげよう。落ちたい者は落ちるがいい。武時は身の本分へ進むばかり」

この決死と猛攻の中に煙った探題邸では、さきに所属の兵が大部分出てしまったので、ほとんど手薄だったらしい。

わずかな守兵は次々に仆れてゆき、英時もいまはと、自刃を思う眼をふさいだ。

博多日記

博多合戦はただの一日でかたづいた。

いや三月十三日の寅ノ一天(午前四時)から辰ノ刻(午前八時)までとあるから厳密には早朝一ト煙の市街戦だったといってよい。

しかしこんな小合戦ですら、それは酸鼻をきわめている。

ただ探題英時は助かった。

一時はそこも陥落し、彼も自刃かとみえたが、すでに武時を裏切っていた少弐、大友の二軍が菊池勢のうしろへかかって、急を救ッたものだった。

そこで、菊池党三百人は、ことごとく戦死した。

大将の菊池武時、子息の三郎頼隆、大円寺の阿日坊隆寂などは犬射ノ馬場のあたりで――。