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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
私本太平記
勝負の壇
勝負の壇
正成は弓杖をつき、すこし跛をひいていた。
もっとも、千早の城兵はいま、五体満足なのはほとんど少ない。将たちもみなどこかには、怪我か手傷を負ッていた。
でなければ病人である。
「……が、了現」
いま、その病棟を見舞って出てきた正成は、うしろの、安間了現をふりむいて、
「意外にみな元気だな。山上にもやっと木の芽や草が萌えてきたし、もう病人に与える青い食物にも事欠くまい」
と、梢の色や地の力を見まわして、それも味方と恃むように言った。
「はい。士気は病者といえあの通りさかんなものです。けれど貯備の食糧がそろそろ底をつきかけておりまするで」
「穀類か、まず」
「稗、粟、米、どれもいくらの余裕もありませぬが、わけて塩倉の塩もはや……」
「調べたのか」
「は」
と、了現はさっそく、ふところ覚えを、よろいの袖から取り出して、およその数量を正成へいていた。ここでの、孤立持久の籠城は、正成がはじめから一貫してきた方針である。
その方針を破ッて、当初、天王寺、堺あたりまで少数の兵でしばしばムリな奇襲を敢行したのも、敵の首があてではなく、塩、粟、干魚、海草などを帰りに運んでくるのが主要な作戦目的であったのだ。