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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

破島

たとえ、あすの運命の岐路が死であろうと生であろうと、帝はじぶんのものでなければならない。“帝王ニ夫婦ノ倫理ナシ”と古くにはいわれているが、彼女は現代の女である。小宰相ずれに帝の御心を寸時でもしびれさせておくなどは、自己のほこりがゆるさなかった。

ほどなく暁を潮に、夜の物蔭が退いてゆくと、彼女もいつか黒木の御所から消えていた。

その日。二十四日である。

「今夜ぞ」

と、お胸もさすが只ならなかった。それをしいて、物静かなうちに、午さがり頃から帝は小机に倚って昼寝していた。そしていつかうつつないお姿だったが、とつぜん、夢魂を醒まされたご容子で、

「たれだっ」

と、水屋明りの方を、恐いお眼でにらまえた。

「み、みかど。た、たいへんでございます」

「金若ではないか。慌ただしゅう、どうしたのだ、何事だ」

「能登が帰ってまいりました。まだ帰るまいと思ッていた能登が、今日にかぎッて、下の柵門に来ております」

破島

能登が島後から帰ったのは、まったくは、昨夜うちだった。

が、彼はそのまま船手を督して中ノ島、西島、知夫里などの浦々をめぐり、島前各地の浜番所の勢子へ、

「異状はないか」