輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
こぼれ針
と、馬へとび乗って、どこへともなく駈け去った。
よほど意外だったらしい。武将のあわて振りにもわかる。まさかとみていたのが、まぎれない足利殿とわかって、仰天したものとおもわれる。
時に、佐々木道誉はどこにいたろう。
いや彼の床几はどこにしろ、彼もまたその伝令には、一驚を喫したことにちがいない。武将は柵門へ引っ返して来た。そして高氏をいんぎんに迎え入れた。
「いざどうぞ。……わが殿には、伊吹のお館の方ですが、さっそくそこへ伝令いたしおきましたゆえ、どうぞ伊吹の御門の方へ」
伊吹の城は、なお不破から北へ、一里余の奥にある。高氏は道の辺の木々にも、仰ぐ伊吹にも、思い出が深かった。ここを通るのは十一年目であった。――あれは都見物に上った十八歳の春。その帰国の途で、忘れがたい一夜をすごした伊吹の城だ。
こぼれ針
その陣羽織は、銀摺りに雪南天の朱い実をちりばめた燦々たるもの。そして、かぶとは用いず、彼が好みの道誉笠だ。
「大弥太、近道をとれ。間道を抜けて行け」
「沢にはまだ、雪が消え残っている所もままありますが」
「かまわぬ、かまわぬ」
道誉の馬はあとだった。
先を飛ぶ田子大弥太の一騎はその影を逆にして沢道の疎林のうちへ沈んで行く。