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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

忍の不死身

「太平記」はその景観を、いつもの古典的筆法で、

日本、小国といへど

か程に人は多かりしと

ただ驚かるるばかりなり

と言い、また元弘三年正月の“現地着到帳”の上では、

諸国の軍勢八十万騎

これを三手に分かちて

吉野、赤坂、金剛山

三つの城へぞ向けられける

としているが、しかしもとより数字は誇張にすぎない。じっさいは「保暦間記」にみえる五万余騎、あるいはそれより少し内輪目ぐらいが、ほんとの数ではなかったか。

それにせよ金剛山をめぐるわずかな一地方に、五万余という人口の急増率は、山河の形貌も変え、住民の生態をさえ根こそぎ覆していたことだろう。

また、いわゆる戦争景気の異常昂奮も吹きまくッて、それをめあてに、他州から流れ込んで来たいろんな人種も、いつか法外な数にのぼっている。そして軍民のけじめもなく、ここの狂気の土壌を、さらに異常な地熱帯としているさまであった。

「や、なんだ、なんだ?」

「お布令だよ。いや、えらい御高札だぞ」

「ほ。金儲けやな」

「そんなケチなものではない。たれであろうと、それをなせば、すぐ小大名ほどな身分になれる。どうだ、そこらの衆」

と、ひとりの男は、じぶんの“学”をほこるように、いま兵が辻に建てて行ったばかりの高札の文を、あたりの顔へこう読んで聞かせていた。