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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

「そのことなら、もう聞いてる、聞いてる!」

とつぜん、額からとび出すような声で、彼は一同をおどろかせた。

「そうくどく、説明にはおよばん。浜御所での休息中に、飛脚どもから聞きとっておる。そこで、皆はどうしたいのだ。またぞろ、軍勢を出そうというのか」

「御意……」

と、おだやかにうけて、

「それも、このたびは、去年の笠置攻めに数倍する大軍をおつかわしなくば、なかなか、事むずかしいかと思われます」

子を諭すような口調でいう老人がある。二階堂出羽ノ入道道蘊だった。

「むむ」

と、高時は合点をみせ。

「やるからにはな。ざっといって、どれくらい?」

「十万とぞんじます」

「十万?」

そんな兵力が、どこにあるか、と言いたげに、高時は眼をまろくした。

「いや、公称十万。じつの数は六、七万で足りましょうか。いずれにせよ、去年の三倍四倍の兵を要しまする」

「それではまるで、蒙古襲来の防ぎに駈け向うような軍勢になるな。……高時が生れぬ前のことだからよう知らんが、あのときは、十万といったそうだ」

「まだしも、蒙古の襲兵は、筑紫の一局でございましたが」

「こんどは」

「吉野、赤坂、金剛山。そのほか、畿内、中国、四国にも」