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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

「すれや、十万も超えるであろうが」

「が、不参も生じますので」

「なるほど」

「召しに応じたくも、途中の敵に阻まれて、心ならずも、参陣できぬお味方など、かぞえておかねばなりません」

「わかった」

高時は、裁可を与えた。

一同が中御所をさがったのは、もう夜に入っていた。それからのこと。武者所は徹夜だった。政所の灯もあかつきを知らなかった。そして須臾のまに、鎌倉の府も、海道口も、日々秋霜の軍馬で埋まった。

――馬糞、ご上洛

と、海道沿いの子供らは、歌にうたった。

稀代な景観に見えたのだろう。毎日、西へゆく軍馬の流れを見ぬ日はない。その馬糞が、鎌倉から都まで、一条につづいているとなす童心の空想は、

――夕焼け、小焼け

の声と似て、何か、明日の晴雨を物思わせたにちがいない。

そんな或る日を。

西から東へ、とぼとぼ、牛車にまかせて来た忍び下向の公卿がある。かねて幕府では、わかっていた人か、四棟ノ御所に迎えて、ていちょうに扱っていた。そして高時との対面の日が待たされた。

高時は、

「しさいない、いつでも」

と、いっている。

しかし周囲は、このさいであり、警戒のいろ濃く、あらかじめ、下向の内意をきいてから、やっと、ゆるした。