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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
「増鏡」「梅松論」すべてが、帝の潜幸事情を、漂流者のあてなしみたいに観て、長年もまた、勅の意外におどろき、俄に旗上げを計ったかのごとく伝えているが、この大冒険は双方共に、そんな生やさしい小芝居の沙汰ではない。
長年の立場からいおう。
名和家は平安朝いらいの旧家で、北日本海第一の大岳といわれる大山のふもとに住み、王朝藤原氏が盛んなころにできた大山寺、三輪明神、修験の大道場などを背景に、神領の領家として富んできた一族。
海幸、山幸にはめぐまれ、日野川に産する砂鉄は刀鍛冶にはなくてならない物であり、大山祭りの年四たびに開かれる上市下市の牧の牛馬の売買からあがる税も少なくはない。
だが藤原氏の衰微につれ、大山もさびれて来たし、ひいては名和家も今は萎みを呈していた。幕府の地頭政策から、領土もだいぶケズリ奪られ、ほかの地頭が近郡にはばをきかせて来たせいでもある。
時しも、といっていい。
はるか吉野にある大塔ノ宮や、正成の手にかくれている四条隆資や、居所不明の北畠親房などから、播磨の大山、伯耆の大山の二つを通して“お味方”をすすめてきた。
隠岐からもまた再三、海人の便りに託しての密使があった。