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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

が、じつは貪欲でまた獰猛の鋭さがあることも、大蔵はよく知りぬいていた。

「やい」

立ちどまって、再三後ろへ。

「早く歩かねえかよ。おい」

「だって親分」

権三は半分泣き面だった。

「いったい、どこへ行こうってんですか。どこへ」

「もう一ぺんさっきの高札の前へ連れて行ってやる。そして、てめえには読めねえだろうから、読んで聞かせてやろうというんだ。はやく来い」

その高札場の辻は、もう彼方に見えていた。入れ代り立ち代り、さっきとも変りのない人群れだった。

――まぎれ込んで、大蔵は、権三の顔のそばへ顔をよせる。

そして小声で、

「……よしか。初めが『大塔ノ宮ノ御事』ってんだが、それはおいて、次の『楠木兵衛尉ノ事』。そこだけ読むぜ。

右、正成ノ首、持参ノ者ニオイテハ、丹後国船井ノ庄ヲ宛テ行ハルベシ

とある。権三、わかるか」

「…………」

「それから次の文句には

賞ハ、卑賤ニ依ラズ、一切仔細ニカカハラザルコト、同前ナリ

つまり凡下放埒でも、坊主でも武士でも、敵味方なく、正成の首さえ持ってくれば、その日から船井ノ庄一郡の地頭にしてやるというお布令だ。ずいぶん、ご褒美の沙汰も出るが、こんな大した恩賞がかけられたことはあるめえが」