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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

したがここも搦手の要所だ。大手は案じるな、達者なものが大勢いる。正成、正季もおることだ。搦手に敵をみるまでは、一日でも療養を大切に寝ているがいい。子供のような世話は焼かすな」

それから彼はすぐ、供の兵と安間了現の名を大きく呼んで、元の下り道へ急いでしまった。けれどその彼自身、弓杖ついて、痛む歩行をこらえてゆく姿であった。

二の丸、本丸。そういう称びかたは、当時まだしていない。

城という語はあっても、あの様式ができたのはずっと後世のことである。

しかし、一千の守兵が、十重二十重の大軍に抗しながら、山上の厳冬にも耐えてきたのは、とてもそれまでにあった武門の旧知識や習慣だけでは、まにあわなかったに相違ない。

そこで新しい智恵が求められ、いわゆる楠木式築城の原始型なるものが、必要から生じたかとおもわれる。

槍なども筑紫の菊池千本槍が使用の始めともいわれるが、宋朝水滸伝には槍の達人がさかんにみえるし、日本の“後三年絵巻”にも早や槍らしき武器はつかわれていた。――で、千早城の防ぎにも、当然、弓に次ぐ新武器となっていたろうし、さらに石や大木までが、かほど有効な爆弾として大量に敵の頭上につかわれたことも前例がない。