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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
上は夜空へ高い櫓組みとなっている。
その土小屋の一つへはいると、短檠の灯があって、荒むしろの上に、正成の姿がみえ、横に正季が坐っていた。
「大蔵、達者か」
「ありがとうございます。おふた方にも、まずはお変りもなくて」
「いや大変りさ」
と、正季が言った。
「城兵みな骨と皮ばかりになりかけている。しかもいよいよ気魄だけは旺なのが不思議なくらいだ。が、きさまは、よくこんな重囲の中をここへ来られたな」
「てまえの前身が前身ゆえ、こ奴、怪しいなと、ご用心の意味なんで?」
「ばかをいえ」
正季は、一笑をくれた。
「怪しむくらいならここへ通しはせん。わしが尊敬しておかぬ加賀田の隠者に説かれて、きさまも料簡を入れかえたと聞き、いまでは味方と信じておるのだ。して加賀田の先生は?」
「あいかわらず、机に坐って、金剛の山絵図やら兵書をひろげ、毎日、首っ引きでございますよ」
「では、先生のお使いか」
「へい。じつはそれ以前に、吉野へ出向いていましたが、ついに吉野は落城です。そこでひとまず舞い戻って来たところ、その由、事つぶさに、楠木殿へおつたえしろと、隠者から申しつかり、さっそくこれへやって来たわけでございまする」