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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁

青空文庫

それを引きつけ、引きつけ、さんざんに戦った果て、義光は自刃した。

後日、寄手の大将二階堂道蘊が、その首を六波羅まで送り届けてから、

「宮ではない」

とわかり、大不首尾をかったというのは、巷間の噂で、真相ではない。

村上義光は、四十を出ていた人である。大塔ノ宮が二十六歳の青年であることはかくれもなかった。偽首だ、身代りだった、とはすぐ知れていただろう。

一方、落ちのびた宮も、搦手軍に追撃されて、いくたびか危うかった。――彦四郎義光の子義隆も、この途上で、父のあとを追うように討死した。――残った供は幾人もない。そして幾昼夜を逃げさまよい、吉野から高野まで、徒歩二日路の山間を、七日余りもついやして、やっと高野へたどりついた。

高野山そのものは、表面かたく中立をとっていた。

千早、金剛の戦雲もよそに、法門の徒は、一切軍事にあずからずとして、さきに大塔ノ宮から令旨をもって、

「吉野城へはせ参ぜよ」

と、さいそくがあっても、

「僧家なれば」

と、その召しにも応じないでいたのである。

が、今日では事情がちがう。――宮は無力な落人にすぎない。身一ツ高野を恃んで来られたのだ。