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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
けれど、初めの使者は失敗した。とても生やさしいおやじではないといって、その偏窟ぶりを勘左衛門からいろいろ聞かされたことだった。で、長崎も苦笑に終り、いつか陣務の忙しさに、それは忘れていたのである。
ところが権三の訴えで、千早と加賀田のあいだに、今もなにか気脈のあるらしいことが分ったので、彼はふたたび、
「奇っ怪な隠者だ。どうあっても、こんどは連れてまいれ」
と、足立源五を二度目の使いにさしむけたわけなのだ。――だから源五としては、初めは処女のようでも、居直ッてしまったからには、時親の首に縄を付けてでも連れ帰る料簡なのはいうまでもないのであった。
「隠者、恐れ入ったか」
以上。源五は事実をならべて、きめつけた。
「……いちいち、それらの申し開きが出来ぬとすれば、隠者も敵方の一人とみとめる。ま、いずれにしろ、陣地まで同道してもらおう。さあ立て」
「いや、ことわる」
「なに」
「めいわく至極だ」
てこでもうごく時親の容子ではなかった。その異相、俗に杓子面というしゃくれ顔の低い鼻から唇のへんに、何ものとの妥協も知らぬ隠棲者独得な孤高のほこりと皮肉にみちた小皺をたたえて、嘯きすましているのである。