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しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(四)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 229,324 字 · 458 頁
時親はすぐ分別する。番作に何か耳打ちして、牛と彼とを路傍にのこし、ひとりその武者について行った。
散所ノ太夫義辰というのは、石川豊麻呂の父である。子の豊麻呂は、楠木正季らの若い仲間のひとりで、戦前には加賀田の山荘にもまま顔をみせていた冠者だった。――行ってみると、義辰は派手な鎧直垂に巨躯を飾って、陣門の前で待っていた。
「おう、やはり加賀田の老先生でござったな」
散所ノ太夫義辰は、自身、陣幕のうちへ迎え入れて、
「山の隠者が、おめずらしく、今日はどこへお出かけで?」
さっそくに、いぶかり顔をしてみせた。
「山といっても……」と、時親は上唇をそらして、笑うのかと思うと、笑うのでもなく真面目くさって。
「近ごろ、鳥獣もいなくなった。生き物は人間だけの山になった。ぜひなく、合戦のないほかの山へ退散の途中でおざるよ」
「では、千早の孤城も、まだ陥ちぬとのお見通しですか」
「わからんな。それは、さて、わしにもわからん」
「兵学から観て?」
「兵学では、あてはまらぬのだ。従来の兵理なら千早はとうに陥ちているはず。理や術ではない。何か千早はべつなものだな」
「何でしょうか、それは」